原文はこちら。
The original article was written by Michiel Borkent (Clojure developer).
https://medium.com/graalvm/babashka-how-graalvm-helped-create-a-fast-starting-scripting-environment-for-clojure-b0fcc38b0746
著者について
Michiel Borkent (@borkdude) はClojureを愛するオープンソースソフトウェア開発者で、 clj-kondo、babashka、SCI、nbbなどのClojure開発者用のツールの作者です。GraalVM Native Imageを使ってClojureをスクリプティングのような新たなコンテキストに適用しようとしています。
Introduction
Babashka は、Clojure 用の高速起動スクリプト環境です。高速な起動と利便性から、Clojure開発者の間で人気があります。GraalVM Native Imageを使用してスタンドアロンバイナリとしてコンパイルされています。
Babashka
https://babashka.org
Clojure
https://clojure.org
GraalVM Native Image
https://graalvm.org/latest/reference-manual/native-image/
Clj-kondo (Clojureのlinterおよびanalyzer) と clojure-lsp (Clojure用LSPサーバー) もスタンドアロンの高速起動バイナリとして提供されています。GraalVM Native Imageは、Clojureツールにとって本当に画期的なものです。
Static analyzer and linter for Clojure code that sparks joy
https://github.com/clj-kondo/clj-kondo
Clojure & ClojureScript Language Server (LSP) implementation
https://github.com/clojure-lsp/clojure-lsp
この記事では、私たちがどのようにスクリプトに最適なClojureの高速起動ネイティブ実行可能バージョンであるbabashkaを作成したかを説明します。また、私たちが行ったいくつかの注意点やトレードオフについても見ていきます。
Babashkaでは、Clojureを使ったスクリプティングが可能です。Clojureは動的型付けされたLispで、関数型プログラミングと不変性に重きを置く言語でJVM上で動作する、汎用的なプログラミング言語であり、Javaを使うようなことはすべてClojureでも可能です。
JVMは強力なプラットフォームで、Clojureは素晴らしい言語ですが、スクリプトの実行に興味関心がある場合、JVMの起動時間はスクリプト実行には適していません。Babashkaを使うと、Clojureのような高レベルの生産的な言語を使用し、超高速な起動時間を実現するという、両方の長所を享受できます。
Fast Startup for Scripting with GraalVM Native Image
BabashkaはClojure言語の大きなサブセットをサポートしていますが、GraalVM Native Imageを使ってスタンドアロンバイナリとして構築されているため、JVMを必要とせず、いくつかの有用なビルトインライブラリとJavaクラスが含まれています。
babashkaの典型的なユースケースには以下のようなものがあります。
- ビルドスクリプト
- コマンドラインユーティリティ
- ちょっとしたWebアプリケーション
- タスクランナー
- git hook
- AWS Lambda
- 高速起動や低リソース使用が重視される、Clojureを使用したい任意の場所
babashkaで何ができるのか、なぜJava開発者にとってbabashkaが興味深いのかを垣間見るために、コマンドライン上で式を評価してみましょう。babashkaのバイナリはbb
と呼ばれます。
$ bb -e '(.exists (new java.io.File "README.md"))'
true
上記の例では、JVMクラスjava.io.File
に対して操作を実施しています。
- 文字列 “
README.md
” でコンストラクタを呼び出す - インスタンスメソッド
.exists
を呼び出す
Javaでは、
new File("README.md").exists()
と書きますが、babashkaはClojureランタイムなので、前置記法(Prefix notation、ポーランド記法とも言う)を使用します。
ただし括弧の個数は全く同じであることに注意してください。メソッドチェーンに近い記法にしたい場合は、 -> (thread-first)
マクロを使用します。
(-> (new java.io.File "README.md") (.exists))
この記事にあるClojureのコードを詳しく理解できなくても心配ありません。Clojureをお使いの場合に、babashkaが便利かもしれない理由について一般的な考えをお伝えすることが意図だからです。
もちろん、JVM Clojureを使用して上記の式を評価することも可能です。
$ time clj -M -e '(.exists (new java.io.File "README.md"))'
true
0.75s user 0.06s system 166% cpu 0.491 total
しかし、気付いて頂きたいのは、この実行に0.5秒ほどかかり(Macbook Air M1の場合)、さらに複雑なプログラムや依存関係がある場合は、かなり時間がかかることが予想される点です。この顕著な例を見るために、babashka自体をJVMのClojureプログラムとして動かしてみます。起動時に読み込まれる組み込みのライブラリやクラスが大量にあるため、時間がかかることがわかります。
$ time clj -m babashka.main -e '(.exists (new java.io.File "README.md"))'
false
14.77s user 0.54s system 214% cpu 7.123 total
7秒かかっています。GraalVM Native Imageでコンパイル済みのbabashkaを使うと、同じコードがずっと早く動作します。
$ time bb -e '(.exists (new java.io.File "README.md"))'
false
0.01s user 0.01s system 83% cpu 0.022 total
たった22ミリ秒です!bashやpythonのようにbabashkaスクリプトの起動は高速で、Clojureコミュニティがbashスクリプトを書くよりもClojureを書きたいので、babashkaはClojureエコシステムのこのギャップを埋めることを目的としています。
より有用な例を見てみましょう。ファイル操作のために、babashkaにはfsライブラリが付属しており、プロセスを生成のためにprocessライブラリが存在します。
File system utility library for Clojure
https://github.com/babashka/fs
Clojure library for shelling out / spawning sub-processes
https://github.com/babashka/process
Clojureプログラム内でJavaクラスをコンパイルして上記ライブラリを使用できるようにする必要があります。以下はその例です。
compile.clj
:
#!/usr/bin/env bb
(ns javac
(:require [babashka.fs :as fs]
[babashka.process :refer [shell]]))
(when (seq (fs/modified-since "MyClass.class" ["MyClass.java"]))
(println "Compiling Java")
(shell "javac MyClass.java"))
このスクリプトは、MyClass.java
ソースファイルが MyClass.class
ファイルより新しいかどうかをチェックし、新しい場合は javac
を実行してクラスをコンパイルします。そうでない場合、スクリプトは何もしません。
#!/usr/bin/env bb
の行は、シェルが bb
インタープリターを使いこのスクリプトを実行すべきことを示し、Clojure はこれをコメントとして扱うことでこの構文をサポートしています。これにより、シェルのパス上にスクリプトを置き、グローバルユーティリティとして扱うことができます。これはすべてのプラットフォームでサポートされているわけではないので、babashkaはスクリプトをグローバルにインストールするためのbbinユーティリティを提供します。
Install any Babashka script or project with one command
https://github.com/babashka/bbin
Running Clojure without the Clojure Compiler in a Native Executable
JVM Clojureコンパイラは、プログラムをJVMバイトコードに変換し、このJVMバイトコードは、GraalVM Native Imageで高速起動のスタンドアロンバイナリにコンパイルできます。つまり、ほぼすべてのClojureプログラムは、GraalVMのnative-image
ツールでコンパイルすれば高速起動を実現できるのです。しかし、babashkaの目的は、この2段階のコンパイルプロセスを経ずに、任意のClojureコードを実行できるツールを提供することにあります。
Babashkaではこの問題を、多くの有用なClojureライブラリをプリコンパイルし、任意のClojureを実行するためのインタプリタを含めることで解決しています。このインタープリタはSCI(Small Clojure Interpreterの頭文字をとったもの)と呼ばれます。
Configurable Clojure/Script interpreter suitable for scripting and Clojure DSLs
https://github.com/babashka/sci
babashkaバイナリを作成するため、インタプリタを構成して、プリコンパイル済みのライブラリ関数にアクセスできるようにするのですが、これには2つの理由があります。
- インタープリタがスクリプトで使用される関数を検索できるようにするため
- 到達可能性分析の結果、
native-image
ツールがそれらの関数を排除しないようにするため
以下はSCIベースの環境をどのように構成するかの例です。これはbabashkaが実際にどのように書かれているかをシンプルにしたものです。
(ns babashka.main
(:require
[cheshire.core :as json]
[sci.core :as sci]))
(def ctx (sci/init
{:namespaces {'cheshire.core {'parse-string json/parse-string
'generate-string json/generate-string}}}))
(defn -main [_ expr]
(let [evaluated (sci/eval-string* ctx expr)]
(prn evaluated)))
ctx
はインタプリタの環境です。インタプリタはホストへのアクセスを許可せず、ctx
引数を使って提供するもののみを提供します。JSONライブラリであるcheshire.core
を名前空間の1つとして提供し、その2つの関数、parse-string
とgenerate-string
を公開します。
そして、これをJVM上で実行できます。
$ clj -M -m babashka.main -e "(+ 1 2 3)"
6
ビルトインJSONライブラリも利用できます。
$ clj -M -m babashka.main -e "(require '[cheshire.core :as json]) (json/generate-string [1 2 3])"
"[1,2,3]"
ユーザーにクラスを利用させたい場合には、明示的にコンテキストにクラスを提供する必要があります。提供しないと以下のようになってしまいます。
$ clj -M -m babashka.main -e '(new java.io.File "README.md")'
Execution error (ExceptionInfo) at sci.impl.utils/throw-error-with-location (utils.cljc:39).
Unable to resolve classname: java.io.File
ファイルを追加してコンテキストを変更すると…
(def ctx (sci/init
{:namespaces {'cheshire.core {'parse-string json/parse-string
'generate-string json/generate-string}}
:classes {'java.io.File java.io.File}}))
先ほどの例が動作することがわかります。
$ clj -M -m babashka.main -e '(new java.io.File "README.md")'
#object[java.io.File 0x68ee7b3b "README.md"]
コンストラクタの呼び出し (new java.io.File "README.md"
) は SCI ではリフレクションを使って実装しています。つまり、java.io.File
のコンストラクタを実行時に動的に検索し、Java Reflection APIを使って呼び出しています。これが動作するには、reflect-config.json
というファイルを追加して、native-image
ツールを構成する必要があります。babashkaでは、SCIコンテキストと生成されたreflect-config.json
ファイルに追加されたビルトインクラスのリストを使って自動化しています。
babashkaのビルドにあたり、まずuber jar (fat JARファイルとしても知られる、全てのプログラム依存関係を含むJARファイル) を作成し、その後以下のようにnative-image
を呼び出します。
$ native-image -jar babashka-standalone.jar \
--no-fallback \
--initialize-at-build-time=clojure,cheshire \
bb
これで、高速起動インタプリタができあがります。
$ time ./bb -e "(+ 1 2 3)"
0.01s user 0.01s system 81% cpu 0.016 total
A Whirlwind Tour of Babashka
Libraries
Babashkaには、スクリプト環境に求められるライブラリが付属しています。以下はその例です。
- HTTPクライアントライブラリ(java.net.httpを含む)
- A tiny curl wrapper via idiomatic Clojure, inspired by clj-http, Ring and friends.
https://github.com/babashka/babashka.curl
- A tiny curl wrapper via idiomatic Clojure, inspired by clj-http, Ring and friends.
- Webサーバー
- http-kit is a minimalist, event-driven, high-performance Clojure HTTP server/client library with WebSocket and asynchronous support
https://github.com/http-kit/http-kit
- http-kit is a minimalist, event-driven, high-performance Clojure HTTP server/client library with WebSocket and asynchronous support
- テンプレート
- コマンドラインのパース
- Turn Clojure functions into CLIs!
https://github.com/babashka/cli
- Turn Clojure functions into CLIs!
java.time
Maven、Clojars(Maven Centralに相当するClojureコミュニティ)、またはgitから、babashkaで書かれたライブラリの読み込むこともできます。例えば、AWSとやりとりするためのawyeah-apiライブラリや、データ間の差分をきれいに表示するためのdeep-diff2ライブラリなどです。
Clojars
https://clojars.org
Cognitect’s aws-api for babashka
https://github.com/grzm/awyeah-api
Deep diff Clojure data structures and pretty print the result
https://github.com/lambdaisland/deep-diff2
Babashkaは、実行時に動的にライブラリを追加することもできます。
#!/usr/bin/env bb
(require '[babashka.deps :as deps])
(deps/add-deps '{:deps {lambdaisland/deep-diff2 {:mvn/version "2.7.169"}}})
(use 'lambdaisland.deep-diff2)
(pretty-print (diff {:a 1 :b 2} {:a 1 :b (range 10)}))
;; {:a 1, :b -2 +(0 1 2 3 4 5 6 7 8 9)}
Cross Platform
bashとは異なり、babashkaでスクリプトを書くことの一つの利点は、それらが自動的にクロスプラットフォームになることです。というのも、JVMはクロスプラットフォームであり、GraalVM Native Imageはすべての主要なプラットフォームをターゲットにしているためです。
REPL-Driven Development
もう一つの利点は、Clojure開発者が信頼しているREPL駆動開発が使えることです。PythonやRubyのようなスクリプト言語の対話型シェルとは異なり、Clojure使いはエディタに接続されたREPLを使用して開発プロセス全体を進めます。これにより、インクリメンタルな構築と、実行中のプログラムの正確な検査が可能になります。REPL駆動のアプローチの良い説明は、Jack RusherによるStop writing dead programsをご覧ください。
Concurrency
Clojureは並行処理が容易な言語であり、GraalVM Native Imageで生成されるネイティブ実行ファイルはマルチスレッドに対応しているので、babashkaもそれをサポートしています。他のスクリプト言語のようなGIL (Global Interpreter Lock) はありません。仮想スレッドが登場すれば、さらに面白くなりそうです。
Task Runner
Babashkaにはmake
に似たタスクランナーが付属していますが、bashのようなDSLではなく、Clojureを使用できます。
Task runner
https://book.babashka.org/#tasks
Pods
babashkaのソースコードでサポートされていないプログラム(例えば、ビルトインではないクラスに依存するコード)のためにPodを記述できます。
Pod manifests describe where pods can be downloaded, etc.
https://github.com/babashka/pod-registry
PodはClojureで書かれ、native-image
ツールを使ってコンパイルできますが、Podプロトコルを実装する限り、他の言語でも実装できます。Podはコンパイルされ、スタンドアロンバイナリとして配布されます。babashkaとPod間の通信は、JSONまたは他のシリアライゼーションフォーマットで行われます。Podの例としては、filewatcher podとsqlite3 podがあります。
Babashka filewatcher pod.
https://github.com/babashka/pod-babashka-fswatcher
A babashka pod for interacting with sqlite3
https://github.com/babashka/pod-babashka-go-sqlite3
Podはbabashkaプログラムのライフサイクル内で一度だけ起動され、全てのPod関数呼び出しで通信します。
Challenges
Build-Time Initialization
Clojureのコードは現在、Clojureコンパイラとランタイムのセットアップ方法が原因で、ビルド時に初期化される必要があります。多くのことがstatic initializer (静的初期化子) で発生し、この作業を実行時に遅延させることはできません。これゆえに、 --initialize-at-build-time=clojure,cheshire
というビルドオプションが必要です。コンパイル済みのすべてのClojure名前空間をこのリストに追加する必要がありますが、このリストはgraal-build-timeライブラリを使って自動化されています。
Library to initialize Clojure packages at build time with GraalVM native-image.
https://github.com/clj-easy/graal-build-time
これは、ネイティブコンパイル済みのClojureプログラムのための以下のセマンティクスにつながります。
(ns my-namespace)
;; this happens at build time
(def random-number (rand-int 1000))
(defn foo []
;; this happens at run time
(let [random-number (rand-int 1000)]
(inc random-number)))
上記のプログラムをnative-image
でコンパイルすると、バイナリを実行するたびにvar random-number
は常に同じ値になってしまいます。これは、delay
を使って初期化を遅らせることで解決できます。
(def random-number (delay (rand-int 1000)))
ClojureのAOTコンパイルでも同様の問題が発生する可能性があるため、これはいずれにせよグッドプラクティスであることに注意してください。
Performance
SCIはプリコンパイルされたコードとインタプリタされたコードを組み合わせて実行できます。SCIはClojure自身で書かれており、GraalVMのことはわかっていません。つまりTruffleインタプリタではないので、Truffleの最適化やJITの恩恵を受けることはありません。
Truffle Language Implementation Framework
https://graalvm.org/latest/graalvm-as-a-platform/language-implementation-framework/
一般的に、SCIで実行されるコードは、Pythonやbashと比較して十分高速です。それゆえ、babashka+SCIのスイートスポットは、主に起動時間とバッテリ同梱 (batteries-included) の側面です。プログラムが多くのホットループを含む場合、JVM上でClojureを使用する方が良い可能性があります。
$ time bb -e "(time (loop [val 0 cnt 10000000] (if (pos? cnt) (recur (inc val) (dec cnt)) val)))"
"Elapsed time: 651.339667 msecs"
10000000
0.66s user 0.02s system 99% cpu 0.681 total
$ time clj -M -e "(time (loop [val 0 cnt 10000000] (if (pos? cnt) (recur (inc val) (dec cnt)) val)))"
"Elapsed time: 10.641333 msecs"
10000000
1.03s user 0.06s system 185% cpu 0.588 total
ここで、bb
がPythonよりもわずかに性能がよい点にご注目ください。
loop.py
:
x = 10000000
val = 0
while (x > 0):
x = x - 1
val = val + 1
print(val)
$ time python3 /tmp/loop.py
10000000
0.85s user 0.02s system 97% cpu 0.894 total
注意: 異なるライブラリのセットを含むbabashkaのカスタムバージョンを構築できます。それゆえ、重要な部分のためにコードをプリコンパイルし、パフォーマンスを向上できます。
Feature flags
https://github.com/babashka/babashka/blob/master/doc/build.md#feature-flags
Custom Types
JVM Clojureでは、Javaインターフェイスを実装するカスタムタイプ (custom types) を記述できます。これらは、新しいJVMクラスにコンパイルされます。babashkaでは、すべてのJVM型がすでに前もって作成されているため、実行時に新しいJVM型を作成することはできません。
例えばClojureでは、以下のようにjava.io.FileFilter
のようなJavaインターフェースを実装する匿名クラスを作成できます。
(def file-filter
(reify
java.io.FileFilter
(accept [this f]
(.isDirectory f))))
(map str (.listFiles (java.io.File. ".") file-filter))
;;=> ("./.clj-kondo" "./.lsp" "./.git")
この特定のユースケースをサポートするため、babashkaには事前にコンパイルされ、実行時にユーザーが指定したaccept
関数にディスパッチするjava.io.FileFilter
の実装が含まれています。このアプローチでは、事前に選択されたreify
可能な実装とインターフェースの組み合わせのリストが必要です。現在SCIは、既存のClojureライブラリとの非互換性の最大の原因であるdefrecord
とdeftype
上のJavaインタフェースの実装をサポートしていません。
Combining AOT and Interpretation
Truffle上のClojureや、Truffle上のJavaの内部でClojureを実行することを探求するのは面白いかもしれません。しかし、プリコンパイルされたライブラリとTruffleコンテキストで実行されるコードの組み合わせにより、起動時間を短縮できるとはいえ問題を提起します。現在のSCIの設定方法の利点は、プリコンパイル済みコードとインタプリタコードの組み合わせが容易な点です。SCIはClojureで実装されているので、ClojureScript(JavaScriptにコンパイルするClojureの方言)のサポートも簡単でした。SCI on JavaScriptにより、nbb
と呼ばれるNode.js版babashkaとscittle
と呼ばれるブラウザ版babashkaができました。
Scripting in Clojure on Node.js using SCI
https://github.com/babashka/nbb
scittle
https://babashka.org/scittle/
Binary Size
ネイティブ実行ファイルにライブラリやクラスを含める場合、実行ファイルのサイズに目を配るべきでしょう。ライブラリが動的にClojureの名前空間を必要とする場合(トップレベルではないのでビルド時ではありません)、それらの名前空間を事前に読み込んだとしても、実行ファイルのサイズが必要以上に大きくなってしまうことがあります。そのため、最適なバイナリサイズを保持するために、native-image
ツールでコンパイルする前に、ライブラリに軽いパッチの適用が必要になる場合があります。この問題を解決するdynaloadライブラリをチェックしてみてください。
The dynaload logic from clojure.spec.alpha as a library
https://github.com/borkdude/dynaload
また、どのライブラリやクラスが長期的に実際に役に立つのか、バイナリサイズを増やす価値があるのか、というトレードオフもあります。Babashkaは現在約75MBです(zip圧縮で20MB)。
Targeting multiple platforms
Babashkaのユーザーは、主要なプラットフォーム(Linux, macOS, Windows)とアーキテクチャ(AMDとARM)でbb
バイナリが利用したいと考えています。Linuxでは、バイナリを静的または動的実行ファイルとしてコンパイルできます。Alpine Dockerイメージで動作するのは、muslでコンパイルされた静的バイナリのみです。Babashkaはこれらのニーズに対応するため、4つの異なるCIプラットフォーム (CircleCI、Appveyor、Cirrus、Github Actions) でビルドされた7種類のコンパイル済みバイナリを現在リリースしています。babashkaがスタートした2019年、AppveyorはWindows実行ファイルのための数少ない利用可能なオプションの1つでしたが、今ではもっと選択肢があります。執筆時点では、CirrusはmacOS aarch64イメージのビルドをサポートしている数少ないプラットフォームの1つです。
Conclusion
GraalVM Native Imageがなければ、babashkaは存在しません。GraalVM Native Imageは、BabashkaをClojureのための高速なスクリプト環境とするために必要不可欠なツールです!
この記事を校正し、フィードバックを提供してくれたAlex Miller, Rahul Dé, Daniel Higginbotham, Martin Kavalar, Anthony CaumondとEugen Stanに感謝します。
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